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ジェネレーション Yシリーズ:ジェネレーション Xにみる新たな父親像(Generation X: New Dad)
*ベイエリア最新事情2005年1月13日*

Generation X(ジェネレーション X)とは?

シングルファザーのラッパー、Eminem(エミネム)のサイト

米国のマーケッターの世代論議で、とかく見落とされがちなのが、ベビーブーマーズの後に生まれた少数世代 Generation X(Gen X :ジェネレーション X)です。世代区分は諸説ありますが、おおまかにいうと1965年から1976年の11年間に生まれた約4,300万人の人たちを指し、現在29歳から40歳の年代です。ブーマーズとジェネレーション Yという前後の大きな人口世代に挟まれ、消費購買力の面でかなり落ちるので、マーケッターからはあまり注目されていません。また、Gen Xが登場した当初は、ブーマーズとの比較で「反体制的な傾向」を大きく喧伝され、「Slackers (怠け者)」などといわれ、否定的なとらえ方をされてきました。このロストジェネレーションとよばれたGen Xも、現在は家庭を持ち、社会の中核を担う世代として、米国の企業や組織で重要な役割を果たしています。

「Gen X Dad(子供中心のジェネレーション X のお父さん)」

最近の世代研究で、このGen Xの「父親としての新たな役割」が社会的に注目されています。この新たな父親像とは「子育て休暇を取り、残業をせず、終業後はまっすぐ帰宅し、子供と一緒に過ごす時間を大切にする」という、新しいタイプの父親たちです。彼らは、子供と過ごす時間を非常に重要視して、「自分たちの父親が、自分にしてくれなかったことを、自分の子供たちにはしたい」と考え、仕事と家庭(子育て)のバランスをとることにフォーカスしています。 1月15日のBoston Globe(ボストン・グローブ紙)の「Gen X Dad」への実際のインタビュー記事によると、Gen X の36歳の父親(ソフトウエア開発者)にとって、最も満足することは、「帰宅後に、子供をバブルバスに入れ、ブロック遊びをして、ベッドで子供にお話しをする」ことで、そのために早朝出勤をして、定時に帰宅するように心がけていると答えています。

毎日平均3.4時間、子供と過ごす「Gen X Dad」

こうした新父親像を裏付けるかのように、ニューヨークのNPO団体Families and Work Instituteの調査に よると、以下の表に示されるように父親の家事や子育てに割く時間の上昇が報告されています。1977年当時は、父親が毎日子供の世話に割く時間は1.8時間でしたが、2002年では2.7時間とおよそ 50%増となり、母親は3.3時間から3.4時間へのわずかな増加で、25年間であまり変化がみられません。また、家事労働は、男性が1.2時間から1.9時間と 58%増加したのにくらべ、女性の家事労働時間は3.3時間から2.7時間の 82%減となっています。また、この傾向は、世代間の比較でより顕著に見られ、Gen Xの父親は毎日平均3.4時間、ブーマーズは平均2.2時間を子供との時間に割くという結果が報告されています。

既婚男性・女性の毎日の家事および育児に割く時間の推移

  1977年 2002年
既婚男性の家事労働時間 1.2時間 1.9時間(58%増)
既婚女性の家事労働時間 3.3時間 2.7時間(82%減)
父親の子供に割く時間 1.8時間 2.7時間(50%増)
母親の子供に割く時間 3.3時間 3.4時間(3%増)
出典: http://familiesandwork.org/eproducts/genandgender.pdf

また、以下の表は、世代間の仕事と家庭の優先度を表した数字です。Gen X世代が、ブーマーズにくらべて家庭重視であることがわかります*

*) Gen Yは、まだ調査母数が少ないが、Gen Xと同様あるいはそれ以上の家庭・子供重視の傾向を持つと推測されている。

世代間の仕事と家庭に対する優先度の比較

仕事 vs. 家庭の優先度 Gen Y
(23歳以下)
Gen X
(23〜37歳)
Boomers
(38〜57歳)
Mature
(58歳以上)
Family-centric (家庭中心) 50% 52% 41% 34%
Dual-centric
(仕事と家庭の両方を重視)
37% 35% 37% 54%
Work-centric
(仕事中心)
13% 13% 22% 12%
出典: http://familiesandwork.org/eproducts/genandgender.pdf

18 歳以下の子供を持つ両親の仕事と家庭の優先度(2002年調査)

仕事 Vs. 家庭の優先度 Gen X (23〜37歳) Boomers(38〜57歳)
Family-centric (家庭中心) 55% 46%
Dual-centric (仕事と家庭の両方を重視) 33% 35%
Work-centric (仕事中心) 13% 20%
出典: http://familiesandwork.org/eproducts/genandgender.pdf

キャリアと子育ての両立に悩む父親たち

こうした「子育て重視傾向の父親」が、新たに直面している苦悩が「キャリアと子育ての両立問題」です。同調査によると、1977年では、父親は「キャリアと子育ての両立にフラストレーションを感じる」割合が全体の3分の1にすぎませんでしたが、2002年では半分以上の男性がフラストレーションを感じていると報告しています。これは、女性たちが長い間抱えてきた典型的な「キャリアと子育ての両立問題」が、男性たちの間でも始まったということを示しています。2000年のRadcliffe Public Policy Centerの調査によると、21〜39歳の男性において、「キャリアを考える上で、家族と過ごす時間の調整が可能なことが最も重要な要素」としてあげられています。この調査では、同じく21〜39歳の男性の70%は、「残業を依頼された場合、例え経済的な損失につながっても、家族と過ごす時間がもっと取れることを優先する」と答えています。

ブーマーズの失敗を繰り返したくない「Gen X Dad」

こうした家庭重視のGen X Dadが出てきた理由として、以下のようなGen Xを取り巻く社会的背景が考えられます。

  • 初めての鍵っ子世代(女性の職場進出が一般化):家庭に対する思い入れが逆に強い
  • 米国の離婚率の上昇(50%以上):シングルマザー・ファーザーや、あるいは継父・継母などに育てられた世代
  • 高学歴化:世代の半数以上が大学へ進学した初めて世代
  • 晩婚化:平均結婚年齢の上昇(1960年の22.8歳から、2003年は27.1歳へ)
  • 男女平等意識の普及:古典的な男女差や男女の役割意識がない
  • 終身雇用制の崩壊:企業のダウンサイジングやバブルによる人員削減を目撃・体験

Gen Xにとって、ブーマーズが持っていた仕事に対する「企業は働けば働くほど社員を評価し、確実な昇進と昇給を与えてくれる」という価値観は崩壊し、企業(雇用主)へのロイヤリティは低下しています。また、Dual Income(夫婦で働くこと)は、現在の生活を維持する上で当然のこととなり、夫婦のうちどちらかが失業した場合のRisk Management(危機管理)として、お互いの仕事と家庭の維持に充分注意を払う姿勢が生まれています。

また、多くのGen Xは、親の離婚を体験しており、父親不在の家庭を反面教師として位置づけ、自分の父親がした失敗を繰り返すまいとして、家庭内の責任を母親と同様に受け入れています。さらに、高学歴化や晩婚化によって、「Soul Mate(魂のパートナー)を探す」という新たな結婚観も生まれ、その結果見つけた妻を人生のパートナーとして尊敬し、お互いに助け合って生活するという考えも、こうした新たな父親像をつくるもとになっています。

企業が期待する仕事と家庭の両立が可能な男性たち

こうした新たな父親像は、ポップカルチャーの分野でも見られ、黒人俳優のWill Smith(ウィル・スミス)は、妻と子供を常に優先する良き家庭人として知られており、その歌詞によって多くの議論を生むラップシンガーのEminem(エミネム)は、娘への愛情を訴えるシングルファーザーとして知られています。彼らの子供への真摯な態度は、新しい尊敬すべき父親像として、一般に注目されつつあり、単なるトレンドというよりは、若い父親たちの家庭への意識の変化として、捉えられています。また、実際に上記Families and Work Instituteの調査では、「Dual - centric(仕事と家庭の両立)」あるいは「Family-centric(家庭中心)」の社員は、「Work-centric(仕事中心)」の社員より、生活において、精神的により健康でより大きな満足を得ており、仕事面でもより深い満足を感じているという結果が出されています。これを受けて、企業側も既婚社員(男性も女性も)の仕事と家庭への関わり方の変化を真剣に認識し、フレキシブルな勤務条件を提示して、バランスのとれた優秀な社員の確保を目指す企業も出てきています。

自らの意志で選択して、子育てをする「Gen X Dad」

上述のボストング・ローブ紙の「Gen X Dad」へのインタビューで、35歳の投資銀行のセールス部門の副社長は、日頃の自分の効率的な勤務状況によって、毎日子供のために6時に帰宅することを、上司に受け入れられていると語っています。彼は、「自分は多分出世の階段から1歩か2歩遅れている。ただ、そうであっても、出世よりも子供と過ごす時間を選択していることの価値は充分にある」と答えています。こういう発言を聞くと、社会や家庭状況によって、強制的あるいは仕方なく子育てを選んだ訳でないことがわかり、「Gen X Dad」傾向は、若い世代を中心に静かに根をおろし始めている、そんな印象を受けました。




大柴ひさみ (Hisami Ohshiba)

1979年外資系広告代理店電通ヤングアンドルビカム(DY & R)に入社、外資系企業の広告マーケティングを16年間担当。1995年にカリフォルニアに移住し、米国大手広告代理店やダイレクトマーケティングの会社勤務などを経た後、1998年2月JaM Japan Marketing(http://www.jamjapan.com/jp/)を設立。2001年1月ビジネス拡大のために、JaM Japan MarketingをLLCとして組織変更する。海外市場進出を目指す日米企業を対象に、クロスカルチャーなナレッジをベースにマーケティング戦略の開発立案、市場調査分析、広告PR、ローカリゼーションを含むコンサルティング活動を提供。講演・執筆活動も多く手がけている。2003年2月初の書籍「ひさみの冒険」がひつじ書房より発行 (http://www.hisami.com)。ご意見・ご質問はhisami@jamjapan.comまで


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