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ジェネレーションYへのマーケティング戦略(Marketing to Generation Y)
*ベイエリア最新事情2003年6月22日*

クリックするために生まれてきた子供たち

私が最初に「クリックするために生まれてきた子供たち」として、ジェネレーションY(Generation Y = Gen Y)を、コラムで紹介したのが2001年8月でした。彼らは、Millennials(ミレニアルズ)、Echo Boom(エコーブーム)とも呼ばれ、大まかな区分で1977年から1997年の間に生まれた7,000万人から8,000万人の世代を指し、米国人口の21%から30%を占め、そのピーク時にはベビーブーマー(BB)を追い越す勢力と言われています。

幼児期からデジタル化された生活をして、その前の世代であるジェネレーションX(Gen X)やBBとは、かなり異なる思考や行動様式を持ちます。彼らは、PCをおもちゃ代わりに使って遊び、Tech & Marketing Savvyな(テクノロジーやマーケティングを熟知した)子供として、成長しています。また親の世代であるBBと大きく異なる点は、その世代の中でマイノリティ人口(白人以外の人種。ヒスパニック、アフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、ミックス)が大きく占めていることです。BB世代のマイノリティ比率は24%で、Gen Yでは34%と大きく増加しており、人種の多様化の影響を受けて、他の世代とは異なる存在として認知されています。

ポジティブな価値観を持ち、親を尊敬するGen Y

彼らの属性を表すキーワードは、以下のように非常にポジティブで、前の世代のGen Xが「Disillusioned(幻滅した)」、「Rebellious(反抗的な)」、「Pessimistic(悲観的な)」と言ったネガティブな言葉で表現されたのとは違って、親の世代のBBが持っていた前向きな価値観を保持しています。

Gen Yの属性を表す言葉 日本語訳
Optimistic 楽天的な
Idealistic 理想的な
Empowered 能力のある
Ambitious 野心のある
Confident 自信のある
Committed 約束を守る
Passionate 情熱的な
Traditional 伝統的な

Source: The Risk of Misreading Generation Y: Zell Center for Risk research Conference Series by Kellogg School of Management in 2002/11/01-02

実際にそれを裏付けるかのように、1999年5月のUS News and World Reportによると、高校の上級生のアルコール飲用は1980年の72%から1998年には52%まで減少し、10代の麻薬、妊娠、殺人の件数も1980年に比べると減少するというモラルの向上のデータが見られます。親の世代のBBとの関係論も、Gen Xの時とは違って非常に良好で、自分たちに高等教育(大学進学)の機会を提供してくれた親を、尊敬・感謝しているという声が多く見られます("The Risk of Misreading Generation Y"のコンファレンスでのY世代の声)。

PCはエンタテイメントのツール

またPCをおもちゃ代わりにして育ったGen Yは、以下のHarris Interactive(http://www.harrisinteractive.com/)の調査数字が示すように、PCをエンタテイメントのツールとして使用して、従来の世代とは比較にならないほどPCと密接な関係論を構築しています。それを示すかのように、この調査で回答した多くのティーンネージャーは、PCのない家庭で暮らしたことがなく、PCはCDプレイヤー、DVDプレイヤー、ステレオ以上に、家庭内における娯楽として重要だと答えています。

PCの役割 13-17歳 18歳以上
PC使用中に音楽を聴く 75% 25%
PCだけで音楽を聴く 41%  
PCをステレオ代わりにしてしばしば音楽を聴く 35%  
次のPC購入時には絶対にCDのバーナー付PCを購入する 87% 73%
次のPC購入時には絶対にDVDのバーナー付PCを購入する 54%

47%

PCにはサラウンドの音響システムが欲しい 37% 26%

By SF Chronicle 05/19/03

こうしたGen YのPC依存による音楽志向に目をつけたApple(アップル:http://www.apple.com/music/)は、今年5月12日iTunes Music Store(オンライン音楽ストア)をオープンし、発売開始16日間で200万曲以上を売り上げました。月ぎめ契約の必要がなく、30秒間試聴可能で1曲に付き99セント、1アルバムに付き9.99ドルという、安価で気軽な音楽のダウンロード・システムは、マックファンのブランドロイヤリティに支えられて、好調なスタートを切りました。競合のMusicNet、Rhapsody、Pressplayなどは、マックユーザは使用できずPCユーザのみをターゲットとしており、全世界で2,000万から2,500万人いると推定される(IDC調べ)マックユーザのみに焦点を絞ったアップルの戦略です。ユーザ自身がマーケティングのエバンジェリストとして自主的に活動するアップルならではのビジネスモデルは、Peer to Peerのファイル交換テクノロジーを使用したKazzaなどとは違ったアプローチで、新たなマックファンをつくるべくマーケティング戦略を展開しています。

Gen Y - Tech & Marketing Savvy(テクノロジーとマーケティングの熟知者としてのGen Y)

上記のアップルに限らず、ホンダやトヨタのような自動車メーカーやAlloy(http://www.alloy.com/)やdELiAs(http://www.delias.com/)Abercrombie & Fitch(http://www.abercrombie.com/)のようなファッション企業も含めて、さまざまな企業がGen Yに対して独特なマーケティング手法でアプローチしています。ポイントは以下のようなキーワードで表されます(Source: Kindred Keziah Inc.)。

1)From Push to Pull(押し付けから引き出す手法へ):

幼児期からあらゆる広告やマーケティングの洗礼を受けているGen Yは、史上最も広告に対して洗練された意見を持つ世代。そのため旧来の押し付けがましい広告戦略に懐疑的で、製品の質が良く、自らが参加してその意見を反映させることができる「草の根型」の広告キャンペーンを好む傾向がある。

2)"Company vs. Consumer" to "People to People"(「企業vs. 消費者」から「人々から人々へ」):

Gen Yは、従来のマーケティングの典型的な視点「企業と消費者が対峙する」という考え方から、「人から人へという同一線上でつながる関係論」を好む。ブランディングの中でGen Yをパートナーとして見つめて、彼らの意見・経験を取り入れて、一緒にブランドを作っていくという姿勢を持つ企業が成功している。

Gen Yが他の世代から差別化される要因は、この「マーケティングのパラダイムシフト」にあります。またさらにこのパラダイムシフトにテクノロジー熟知者としての視点が加わり、より高度な戦略が必要とされています。多くのGen Yは幼児期からインターネットに慣れ親しんだ洗練されたオンラインショッパーです。やたらと技巧やデザインに走ったサイトよりは、価格比較が可能な使いやすいインターフェースで、快適なオンラインショッピング経験を望んでおり、その期待はかなり高いハードルとなっています。また米国のティーネージャーの4分の3はログオンした時にIM(Instant Message:インスタントメッセージ)を必ず使用すると言われ、EmailよりはIMを多用する世代です。それに対応すべく、友人とIMでチャットして相談しながら旅行チケットを購入できるトラベル・オンラインサイト(http://www.travelocity.com/)などは、彼らの志向性をうまく捉えています。

人数は多いけれどもIndividualな(独立した個人でいたい)Gen Y

Gen Yは次世代の米国最大の消費者ですが、最大公約数的なアプローチを好まず、「自分らしさ(Individual =独立した個人でいたい)」を求めつつ、価値観を共有できるコミュニティを大切にしています。AlloyやESPN主催のX Gamesに代表される企業は、早くからこの志向性を理解し、そのパラダイムシフトに適合したマーケティングを展開し、Gen Yの成長とともに成功した数少ない企業です。こうした企業の成功例が示唆するように、テクノロジーを活用し、オンラインとオフラインを効率的に統合し、彼らをターゲット消費者ではなく企業の協力者(パートナー)として認め、彼らの意見を尊重して、彼らと一体化したブランド・コミュニティを構築できる企業のみ、Gen Yの支持を取り付けることが可能となります。この今までにない高度なマーケティングのハードルを越えぬ限り、企業とGen YのEngagement(エンゲージメント:婚約)の成立は難しく、今後各企業の大いなる努力が要求されます。



大柴ひさみ (Hisami Ohshiba)

1979年外資系広告代理店電通ヤングアンドルビカム(DY&R)に入社、外資系企業の広告マーケティングを16年間担当。1995年にカリフォルニアに移住し、米国大手広告代理店やダイレクトマーケティングの会社勤務などを経た後、1998年2月JaM Japan Marketing(http://www.jamjapan.com/jp/)を設立。2001年1月ビジネス拡大のために、JaM Japan MarketingをLLCとして組織変更する。海外市場進出を目指す日米企業を対象に、クロスカルチャーなナレッジをベースにマーケティング戦略の開発立案、市場調査分析、広告PR、ローカリゼーションを含むコンサルティング活動を提供。講演・執筆活動も多く手がけている。2003年2月初の書籍「ひさみの冒険」がひつじ書房より発行 (http://www.hisami.com)。ご意見・ご質問はhisami@jamjapan.comまで


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