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| インターネットマーケティング戦略:1998年12月執筆 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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United Airlines(ユナイテッド航空)とSouthwest Airlines(サウスウェスト航空)
インターネットの日常化に伴うE-Commerce(電子商取引)の普及は、航空業界に新たなマーケティング戦略の変化をもたらした。競争の激化するアメリカ航空業界で王者United Airlines(ユナイテッド航空)と格安チケットの販売をキャッチフレーズに掲げ、常に巨大航空会社に挑戦してきたSouthwest Airlines(サウスウェスト航空)のインターネットマーケティング戦略とは? 熾烈な戦いの中で、変化を強いられるアメリカ航空業界 日米の国土の広さを比較する時、日本がカリフォルニア州とほぼ等しい面積であることがあげられるように、その広大なアメリカでは日本の想像以上に一般の人たちの飛行機による移動が日常化している。さらに巨大な航空会社以外に小規模の航空会社がエリアごとに多く存在するアメリカの航空業界は、その系列利害関係を含めて熾烈な争いを展開している。 ディスカントチケットの出現は、飛行機の一般化を急激に押し進め、航空会社のマーケティング戦略を大きく変えた。1998年4月、世界最大の航空会社ユナイテッド航空の会長兼CEO のGerald Greenwaldは、お膝元シカゴでのスピーチで、サウスウェストとユナイテッドのみがこの熾烈な競争の勝利者であると宣言し、「タクシーとバス」に2社をたとえ、おのおのの顧客を「価格志向とサービス志向」であると定義した。これは航空業界の巨人ですら、急激に変化する消費動向に揺さぶられる航空業界の危機的状況を認めたことに他ならない。 こうした状況に拍車をかけているのが、インターネットの日常化に伴う電子商取引の普及である。オンラインマーケットの中で旅行代理店のセールスは急増しており、電子チケットを購入する一般旅行客のオンラインショッピングへの定着率は高く、その数は加速度的に増加している。情報の鮮度、情報の量、検索の自由度、チケットの受け渡しの不必要さ等どれをとってもオンラインチケットの購入は、実際の電話や販売店での購入より消費者にとって効率的である。こうした状況が生み出した結果として、各航空会社はインターネットをマーケティング活動の中心にすえ、より直接的に顧客とインターラクティブに関わっていく新しいビジネスを展開し始めた。 元祖マイレージプラスのUnited Airlines(ユナイテッド航空)が展開するマーケティング戦略とは? 世界最大の航空会社ユナイテッドは、1997年173億7,800万ドルの総収入をあげ、1,214億2,600万マイル Revenue Passenger Miles‐RPM's(総収入乗客マイル数)を売り上げた。70年以上の長い歴史を誇るユナイテッドの企業ポリシーは、機内やTVCMで流れるSound Logo(サンドロゴ_その企業をイメージするテーマミュージック)に象徴される「ゆったりと世界中の空を楽しみながら飛ぶ安心と信頼のできるサービス」にある。 そしてその看板とも言えるユナイテッドのMileage Plus(マイレージプラス)は、距離数(マイル数)をポイントとして計算されることから海外旅行市場において顧客のロイヤリティ獲得のために非常に効果的に作用し、ホテル、レンタカー、レストラン等さまざまな旅行関連ビジネスとの提携を生みユナイテッド航空の巨大化に貢献した。 しかし前述したGreenwald会長の言葉によると、アメリカの飛行機利用客の90%がディスカントチケットを購入しており、さらのその70%が50%あるいはそれ以上のディスカント率で航空券を購入している。これはかつてのユナイテッドあるいは伝統的な航空会社が訴求し続けた「飛行機による旅の楽しみ」の喪失を意味し、価格対応に焦点をあてた新たな競争を意味する。 こうした状況下のもと、ユナイテッド航空はその中心をなすマイレージプラスメンバーの特典を拡大することによって顧客の囲い込みを展開し始めた。そのマーケティング手段として浮上してきたのがインターネットである。ユナイテッドは自社のWebサイトを徹底したメンバーサービスのメディアとして活用し、従来のダイレクトメール、その他のメディアコストや人件費を削減してサイバー化を促進している。 Nuts(クレージー)と呼ばれるSouthwest Airlines(サウスウェスト航空)の賢明なマーケティング戦略とは? 全米53都市を結び、1997年総収入38億ドル、RPM's 284億マイル、ランキング5位のサウスウェスト航空に関しては、そのWebサイトを見ることによって企業姿勢が一目瞭然とわかる。そこでは乗客を乗せて空を飛ぶ航空会社が、その重厚さとは裏腹のユーモアを前面に押し出したコンセプトで自らを語っている。 これは27年前テキサスで始まったユニークな航空会社の変わらない企業姿勢であり、機内の無料サービスではソフトドリンクとナッツしか出さないことと、英語でクレイジーな人を指すNuts(ナッツ)に引っかけて、゛Nuts!(Southwest Airlines' Crazy Recipe For Business And Personal Success By Kevin Freiberg And Jackie Freiberg_企業と個人的成功のためのサウスウエスト航空クレイジーレシピ)゛という本が出版されているぐらい、周知な企業コンセプトである。 自社スローガン ゛A Symbol Of Freedom (自由の象徴)゛に示されるように、創業以来サウスウェスト航空は顧客に提供する商品を「距離間の移動」として、誰でもどこでも格安料金で移動が可能であるという独自のマーケティング戦略を確立してきた。そのため座席指定を行わず、ソフトドリンクとナッツのサービスだけでも顧客はサウスウェストに満足しており(Department of Transportation Air Consumer Reportsによる1.オンタイムスケジュール、2.確実な荷物管理、3.最も少ない乗客の苦情という航空会社のAnnual Triple Crown_年間三冠王を1992年から1996年まで5回獲得)、自らの位置づけをマスマーケットの交通手段としている。 さらにこの徹底したコスト削減による「最も安い航空券(平均片道航空券$75)の提供とフライトスケジュールの厳守」という一貫した企業ポリシーは、ユナイテッドと遜色ない大量のユーモアあふれるマスメディア広告によって、インターネット出現以前から広く一般に認知されている(1998年1月、雑誌Fortuneによるアメリカで働く会社_ベスト1に選ばれる)。こうした独自のマーケティング戦略は、新たなTicketless(実際の航空券を事前に必要としない電子チケット)時代を迎えた航空業界の競争論理に見事に対応しており、それを具現化したのがWebサイトである。 メンバーのためのメディアとして活用されるユナイテッド航空のインターネット戦略とは? ユナテッド航空のWebサイトはTraveler Link(旅行者用サイト)とAirline Link(ユナテッド航空利用者用サイト)に大別され、航空機を利用して世界を旅する人のために百科事典的な膨大な情報を網羅して巨大なサイトをつくりあげている。ただし、マイレージプラスのメンバーですでに自分のパスワードをこのサイトのセキュアシステムに登録していないと中に入れないコンテンツが多く、あくまでもメンバー中心のWebサイトとして設計されており、メンバー以外は一般的情報のみを入手する仕組みとなっている。 特にメンバー特典として電子商取引上で販売されている特別料金の航空券やパッケージ旅行はしっかりガードされており、メンバーもサイトに登録して自分のパスワードが郵送で送られてくるまで2_4週間待たなければならない。こうした厳重なセキュリティ・システムは、企業に対する信頼性を生み出し、囲い込み効果となってメンバーのWebサイトユーザー化と一般Webサイトユーザーのメンバー化を促す役割を果たしている。 ユーザーの知りたい情報ごとにおのおの4つに分かれたサイト(Traveler Links - Planning & Reservations, At the Air port, In the Air, Upon Arrival. Airline Links ミ Our Company, Products & Services, Mileage Plus, Gallery)では、マイレージプラス以外の自社の特別サービス(The Red Carpet、Silver Wing Plus)、 関連会社(United Connection、United Cargo、United Express、United Ground Link、United Shuttle、United Vacations)の膨大な情報が非常に整理されて盛り込まれている。 特徴的なことはグループ会社のサービスや商品以外の為替、天気、税関、ホテル、食事、言語、観光情報、道路情報等一般的な情報は他の独立したWebサイトへのリンクに委ねている点にあり、電子商取引に関わる関連会社の情報をWeb上でとる場合はやはりパスワードが必要となる。これは今後の電子商取引上で起こり得るトラブルを未然に防ぐ手段として、一つの方向性を示唆する好例といえる。 独自の路線を突き進むユーモアあふれるサウスウェスト航空のWebサイトとは? 1982年、創業者の一人 Herbert D. Kelleher が Permanent (永久的な) 社長、会長、CEOに就任したことからもうなずける、個性的な企業サウスウェスト航空のWebサイトは、彼の顔を最初のイラストレーションのページに置き、ジョークとも思える親しみやすさで始まる。もちろんサイトが電子商取引のセキュリティ・システムにガードされていることについて説明されているが、ユナイテッドとの大きな差異は、誰でも簡単にEmail登録をして特別料金その他、サウスウェスト航空の特典(マイル数ではなく利用頻度をポイントとして計算するメンバーシステム)に関するサービスやオンライン定期購読が可能という点にある。 サイトの作り方の特徴はサウスウェスト航空初心者、インターネット初心者どちらにもわかるシンプルで簡潔なコンテンツにある。Home GateからIndex(目次)、Schedule(フライトスケジュール)、Reservation(予約)と3つに分かれたサイトは航空機利用に必要不可欠な情報を非常にわかりやすくまとめている。時間や手間を省略するためのオンラインショッパーの心理に焦点をあてた工夫は、Indexにある1_2行に内容を要約した見出しなどにも良く現れている。 随所にユーモアを感じさせる語り口は初心者に親近感を抱かせる上手な作り方であり、Historical Advertising Gallery(歴史的な広告ギャラリー)では今まで訴求してきた企業メッセージが誰でもすぐわかるように配置されており、効果的な企業PRとしての役割を果たしている。旅行情報については自社の持つ関連会社Southwest Airlines Vacationsで観光、食事、宿泊、交通機関その他関連情報を要領よくまとめ、必要に応じて独立した他のWebサイトへリンクさせている。 ユナイテッドとは対極をなす、Hand Made (手作り)の個性が生きるサウスウェストの Webサイトは、すべてこの企業の持つユーモアと独特のサービス精神から発信されており、インターネットの日常化以前から始まっていた独自のマーケティング戦略は、そのサイバー化によってより強力に推進されている(Air Transport World による航空会社 Webサイトでベスト1に選ばれている)。 E-Commerce(電子商取引)が変えていく航空業界の未来とは? すでに待ったなしに始まっているE-Commerce(電子商取引)は、今後あらゆる業種にさまざまな課題と新たな市場の拡大をもたらす。これは現在ではアメリカだけで起こっている現象のように思われるが、世界のグローバル化はいやおうなしに日本のマーケットにも押し寄せてくる。 特に航空業界はもともとボーダーレスな世界であり、なおかつパッケージツアーや航空券販売はインターネットにとって最適な商品となりつつある。「バスに乗るかタクシーに乗るか(サービスの質か価格か)」は乗客のおかれた状況、目的、予算、スケジュール、タイミングその他によってその都度変わる。顧客を囲い込むマーケティング手法は異なるにせよ、ユナイテッドもサウスウェストもすでにこうした状況を把握してTicket less(電子チケット)を含めたインターラクティブなマーケティング戦略を展開している。 消費者のサイバー化は、企業の古典的なマーケティング手法では追いつかないほど早い速度で進行している。自分自身を1人の消費者に置き換えた時、現実が指し示す事実は明解である。一度安全で便利なやり方を知った消費者に不便で手間のかかる方法への後戻りをすすめることは不可能である。価格やサービスへの消費者の期待は、かつての固定的概念からすでに遠く離れたところに位置する。そこで必要な企業努力は従来の常識を押し破ることから始まり、21世紀の消費者生活にあわせた商品、サービスをいかに早く提供できるかにかかっている。 Advertisers ranked Top 200 by USA ad spending(広告支出額によるアメリカトップ200広告主): United Airlines(ユナイテッド航空)とSouthwest Airlines(サウスウエスト航空)推定広告費と媒体別広告費
United Airlines(ユナイテッド航空)とSouthwest Airlines(サウスウエスト航空)のサイト比較
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大柴ひさみ (Hisami Ohshiba) 1979年外資系広告代理店電通ヤングアンドルビカム(DY&R)に入社、外資系企業の広告マーケティングを16年間担当。1995年にカリフォルニアに移住し、米国大手広告代理店やダイレクトマーケティングの会社勤務などを経た後、1998年2月JaM Japan Marketing(http://www.jamjapan.com/jp/)を設立。2001年1月ビジネス拡大のために、JaM Japan MarketingをLLCとして組織変更する。海外市場進出を目指す日米企業を対象に、クロスカルチャーなナレッジをベースにマーケティング戦略の開発立案、市場調査分析、広告PR、ローカリゼーションを含むコンサルティング活動を提供。講演・執筆活動も多く手がけている。2003年2月初の書籍「ひさみの冒険」がひつじ書房より発行 (http://www.hisami.com)。ご意見・ご質問はhisami@jamjapan.comまで。 |
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