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誰かと話すから「言語」は保持されていくのに、自分が部族固有言語の最後の話者だとしたら?と考えると、ぶるっと身震いが起きる。この記事の中で心が震えたのは、以下に抜粋した部分、週末はこういうことを考えるためにあるような気がする。

『A loss  for words たったひとりのことば 絶滅する言語と失われゆく「世界」』 

英語というデジタル時代の共通語が勢力を伸ばし続ける影で、4カ月に1つ、この世界から言語が失われている。言語の消滅が意味するのは、それを話す人々の文化とアイデンティティ、自尊心の消滅だ。消滅した言語の習得を誓った青年、言語のテクノロジー化を試みる学者、一度絶滅した言語を復活させたコミュニティ…。絶滅言語を救う人々を追ったロングストーリー。

多くの子どもは誰に言われずとも物真似をするものだが、ケユクは九官鳥のようにことばを真似できた。彼の父は、白人だが、子どものころにアラウコ地方で過ごしたことがあった。そこはチリ最大の先住民コミュニティ、マプチェ族の住む地域である。彼はケユクに彼らの言語、マプドゥングン語を教えた。本の虫で優等生だったケユクはそれを難なく使いこなせるようになった。そして、小学3年生のときの研究プロジェクトで、先住民族に強烈に心を引かれる。シャーマンの血を継ぐイヴォンヌは、これを見て、先祖が彼を通して話しているのだと考えた。

彼女が血統について伝えると、ケユクは、セルクナム語、そしてほぼ絶滅している南端の近隣民族の言語であるヤーガン語をゆくゆくはマスターし、自分の子どもに伝承したり、場合によっては部族の子孫のあいだに再び言語の種をまくと誓った。14歳のとき、彼は父親と一緒に、チリのアンタルティカ県にある「世界最南端の町」、プエルトウィリアムズを訪れ、ヤーガン語の最後のネイティヴスピーカー、クリスティーナ・カルデロンと会った。それ以来、彼女はケユクに電話で個人指導をするようになった。

「この言語(セルクナム語)でぼくが素晴らしいと思う点のひとつは、愛を表す語彙の豊富さです。年齢や性別、話す人のあいだの親密さや感情の性質によって、表現が変わるのです。スペイン語では言い表せないようなことがありますよ」

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